覚えているかたがいるかどうか。
ずっと前のことだが、回転寿司のネタに「チリ産ロコ貝」という売れ筋があった。
食感がアワビそっくりなので「チリアワビ」とも呼ばれた。
南半球の夏、プエルトモン近海の天然ロコ貝漁が解禁になる。
僅かな期間の勝負なので私にも出番が回ってきたのだ。
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リオっ子をカリオカcariocaというように、ブエノスっ子をポルテニョporteñoという。
アルゼンチン人はとにかくおしゃべりだ。やかましいグループがいると、彼らだとすぐわかる。
マタさんは、サンティアゴを本拠にする貿易商社のアルゼンチン担当駐在員だった。
毎年ロコ貝の突貫シーズンだけ、ブエノスアイレスからプエルトモンに応援に来る。
がっちりした体躯に蓬髪、口髭をたくわえたポルテニョ流プレイボーイである。
これで面子はそろった。
そして、ある週末の夜…